大量の国債と日本銀行
書誌事項
- タイトル別名
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- Large Government Bonds and the Bank of Japan
説明
本稿の趣旨は、巨額な国債がどのような仕組みで発行されているか、その特徴を編年的に析出し、それに日本銀行がどのように係わっているかを分析して、日本的な国債発行方式の特性を明らかにすることである。まず、国債の現況がいかに不合理な累積になっているか、諸財政統計から数量的に明らかにし、また諸外国と異次元に大量の国債発行ができている実態を比較した。第2に、毎年度の大量の国債発行がどのように消化されているか、日本的な仕組みを解説した。日本の金融制度と整合性を図り、国債を市場隔離型に管理する方法として、引受シンジケート団を組織し、市中銀行に国債を満期まで保有させる方法をとった。それが、金融市場の発達する過程で、ディーリングを認めざるをえなくなる。ついで金融自由化の時代になると、プライマリー・ディーラー制度へ改変される過程を明らかにした。第3に、国債の保有主体がその保有額を変えたところを析出し、国債消化の困難や限界をみた。第4は、大量国債を継続できる仕組みが、日本的な国債償還制度にあることを分析した。第5は、第2次安倍政権になって、国債に日本銀行が係わってくると、それがどのような状況を生んでいるかを論じた。財政法第5条で国債の日銀引き受けが禁止されているので、日銀の国債引受は違法であるから、さすがにそこまでは踏みきっていない。その代わりに、引き受けられた国債を時間をおかずに、金融機関から買いオペーションで引き取る手法で、日銀引受と同じような擬制的な対応をとっている。それと、日銀のデフレ対策のQQEと関連して、日銀に大量の国債が保有されている実態を明らかにした。そこから市中銀行等の信用創造に代わって、日銀が歯止めなく信用膨張を続けている実態を明らかにした。いまや、日銀のQQEは出口を見つけ出せない失策となっている。マネー経済化の状況で、世界での予期せざる経済変動が起きようものなら、それに対応できない状況になっていると結論した。
収録刊行物
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- 経済研究所年報
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経済研究所年報 (53), 81-109, 2021-10-05
経済研究所
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050008909165970304
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- ISSN
- 02859718
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- IRDB