中国家計調査データによる「灰色収入」の推計

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タイトル別名
  • Estimation of “Gray Income” Using the Chinese Household Income Project Dataset
  • チュウゴク カケイ チョウサ データ ニ ヨル 「 ハイイロ シュウニュウ 」 ノ スイケイ

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抄録

本稿は、中国における灰色収入の大きさを推計するものである。本稿では、第1 に、王(2010)が示していないエンゲル係数法の理論的根拠について検討を行い、王(2010)のエンゲル係数法により灰色収入の推計が可能であるためには、ある特定条件(調査データによる推計エンゲル係数と公表データによる公表エンゲル係数が等しいという条件)が満たされなければならないことを示した。第2 に、CHIP2007 データを用いてエンゲル係数法による灰色収入の推計を行い、上記の特定条件を満たすためには、一部のデータを重複して利用しなければならないことを示した。これにより、王(2010)の示した、異なるサンプルで上記の条件を満たすことは極めて難しいと思われる。第3 に、王(2010)の特定条件を仮定せず、統計的な分位法(十分位と五分位を併用した分類)により階層を分類し、各階層における灰色収入を推計した。CHIP2007 データを用いた推計の結果、王(2010)と同様に、高い所得階層ほど灰色収入が総収入に占める割合が高くなることが示された。分位法(Quantile Method)により所得階層を分類した場合、最高所得階層である第10 十分位の人は、灰色収入全体の38.45%(王の所得分類に従うと51.88%)を手にしているということになる。第4 に、本稿における灰色収入の推計結果として、2007 年における都市部の推計灰色総収入(UTGI)の規模は、GDP の40.6% ~48.3% に相当する11兆元(約167.9 兆円)であることがわかった。これは本稿のモデル構造上、公表エンゲル係数と推計エンゲル係数の違いにより灰色収入がより大きく推計されてしまう可能性がある。実際の灰色収入は、推計された数値より低い値である可能性があると考えられる。

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