Eclipse寄付バッジによるバグレポート応答時間の影響分析

説明

規模の大きなオープンソースソフトウェアプロジェクトの維持に資金確保は重要であり寄付が集められている.その寄付収集のため,オープンソースソフトウェアプロジェクトの Eclipse はバグ管理システム Bugzilla において一定額以上の寄付者にバッジ (寄付バッジと呼ぶ) を付与するという特典を用意している.寄付バッジを持つ貢献者からのバグレポートが早く対応されるとすれば,効用のある寄付バッジを得るために寄付を促進させることができる.しかし寄付バッジの影響はこれまで明らかになっていない.本稿では,バグレポート提出後,最初の応答までの時間が寄付バッジの影響を受けるのかを明らかにする.寄付バッジをもたないバグレポートと比較して,寄付バッジをもつバグレポートに対する開発者の応答時間を Quantile Difference in Differences (QDID) という手法で分析した.その結果,寄付バッジが応答時間を中央値で約 2 時間短縮することが明らかとなった.また,Eclipse コミュニティを対象としたアンケート調査では,寄付バッジの有無はバグレポート対応への優先度に大きな影響を与えないとの回答を得た.以上の結果から,Eclipse の寄付バッジは,明示的な優先事項ではないがシグナリング理論のシグナリングとして働き,寄付者に好ましい効用があるということがわかった.

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