マオリ社会とCovid-19

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  • マオリ シャカイ ト Covid-19
  • Maori Responses to Covid-19

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type:Article

本論の目的は,世界的なパンデミックという事態を受け,ニュージーランド,とりわけ先住民マオリにおける「疫病」に対する歴史的記憶をたどりつつ,病をめぐる世界観をとらえなおすとともに,ニュージーランド社会のCovid-19対応を,国民/先住民の関係性に着目しながら考察することである。ニュージーランドは先住民マオリとイギリス系の民族,およびさまざまな地域からの多様な移住者から成り立つ移民国家である。2020年から続くCovid-19対応は,「一般国民(市民)」と「先住民」との共生やつながり,あるいは分断を改めて浮き彫りにした。ニュージーランド政府による,Covid-19に対する「スタンダードではあるが,一種類しかなく,一つですべてにあてはめる(one-size-fits-all)」アプローチは,マオリからは隔靴掻痒の極みであり,今なお続く植民地主義の現れのようにも受けとめられたのである。マオリ語で「国の病(mate karauna)」という異名をもつCovid-19との関係性は,マオリにとって「境界を越えて外の世界から持ち込まれた災厄」に対する対応であると同時に,国や主流社会との応答であった。一方で,ニュージーランド社会全体としては,このパンデミック対応政策は多様化・重層化が進む移民社会と先住民社会を共生させる市民社会実現の試金石として,さまざまな試みが積極的に展開されたといってよい。「多様性をうけとめる包摂的な社会」を目標として掲げるジャシンダ・アーダーン(Jacinda Ardern)首相,およびニュージーランド社会におけるCovid-19対応は,今まさに正念場を迎えているのである。

identifier:http://repository.musashi.ac.jp/dspace/handle/11149/2404

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