主成分分析を用いたムササビ(Petaurista leucogenys)の音声タイプの分類

書誌事項

タイトル別名
  • Call classification of the Japanese giant flying squirrel (Petaurista leucogenys) using principal component analysis

抄録

ムササビPetaurista leucogenysは樹上性のリス科の動物である。本種は大きな声で鳴く動物であるが,音声についての研究はあまり行われていない。先行研究では,鳴き交わしに使われる「グルル」や繁殖や警戒時に発される「キョキョ」等のいくつかの音声タイプを発することが明らかになっている。一方で,「グルル」にはサブタイプが確認されているが,その分類方法は主観的であるため,より客観的な方法での分類が求められる。そのため本研究では,東京都高尾山と神奈川県大雄山にて,プレイバック実験によってムササビの音声を効率的に録音し,鳴き交わしに使われる「グルル」と繁殖や警戒の意味を持つ「キョキョ」の2タイプについて,6つの要素(ピーク周波数,ノートの持続時間,コールバウトの持続時間,ノート間隔,パルス数,ノート数)について主成分分析を用いて客観的に音声分類を行った。プレイバックの鳴き声に対する反応と,自然に発される音声を比較したところ,「グルル」は音声に変化がなかったのに対し,「キョキョ」は音声に違いが見られ,第一主成分はパルス数とノートの持続時間,第二主成分はノートの数とコールバウトの持続時間の寄与率が高かった。「キョキョ」はプレイバックに対する鳴き返しの時と,繁殖行動時に自発的に発せられた時で分かれたことから,「キョキョ」にはサブタイプがあり,繁殖の時と警戒の時で異なる音声を発している可能性が示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ