長時間の動体管理に適した屋内測位手法

抄録

近年,屋内における測位のニーズが多様化している.従来は目的地へ向かうためのナビゲーションが主体であったが,最近では施設の利用状況の把握,マーケティングといった調査や分析のための測位が求められるようになった.このように将来的に屋内測位を行う状況が多様化していくと考えられる.しかし,既存の屋内測位手法は着席や食事などを想定しておらず,測位誤差の発生に繋がる.また,動態管理で測位対象となるオフィス等では通路幅および通路どうしの間隔が狭い狭隘空間であり,マップマッチングを用いたとしてもリンク間距離が狭いためリンクの誤選択が起きやすく,測位誤差の影響がその他の空間と比較して大きくなる.加えて,近年注目されている PDR は高頻度に慣性センサのデータを取得する必要があり,電力消費の観点から長時間の稼働には適していない.そこで本研究では,PDR と状態認識を並行して稼働させ,状況に応じた補正や計算処理の最適化を施すことで,狭隘空間に対応した長時間稼働が可能な動態管理向け屋内測位の実現を目指す.2 種類の認識機構を用いてユーザの状態を識別する.1 つ目は機械学習による状態識別機構,2 つ目は極値判別を用いた動作検出機構である.状態識別機構では機械学習,動作検出機構では極値判別を用いてユーザの状態を認識した後,状態機械へ入力して現在の状態を確定する.その状態に応じてシステムの挙動を変化させる.特に着席状態においては推定位置の更新を停止し,各種センサのサンプリングレートを低下させ,状態認識機構を軽量動作するものに切り替えことで測位誤差と電力消費を抑制する.評価の結果,通常の PDR と比較して平均測位誤差を 51%,電力消費を 40% 低減することができ,提案手法は長時間の動態管理に適用が可能であることを示した.

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