『日本書紀』に表れた畏怖・恐怖と倫理観

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  • 『 ニホンショキ 』 ニ アラワレタ イフ ・ キョウフ ト リンリカン

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抄録

まず、畏怖・恐怖を表す漢字が『古事記』とは比べものにならないくらい多種多様になり、感情の表出である形容詞群「威・可畏」とおびえる動作も含む動詞群「懼・畏・恐・怖・惶」に分けられる。その内容は天皇(朝廷)への畏怖(「威」「畏」「恐」)が最多であるが、特に「可畏」には外見や性情への恐怖、「懼・怖・惶」には天への畏怖と性情への恐怖が表され、『古事記』に比べるとより儒教的・人間的世界観が描かれ、天皇の権威や天、性情というものが倫理観の基本として描かれていると考える。次に、名詞の「罪」という語が表す内容も天皇や朝廷への侵犯行為を表すものが最も多いので、ここでも天皇(朝廷)の権威が倫理観の基本になっていると言える。最後に、『古事記』と似た話の内容に着目すると、『日本書紀』の話の方が「道」や『礼記』という儒教的世界を背景に状況や心情説明がより詳細に行われ、善悪の価値観が明確に書かれるとともに、天皇のあり方というものも問題視されている。『古事記』よりも儒教色がより濃いのが『日本書紀』であり、書紀編者が儒教的倫理観を明確に打ち出そうとしていることが分かる。

収録刊行物

  • 日本文學研究

    日本文學研究 61 15-28, 2022-02-15

    東京 : 大東文化大学日本文学会

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