アマゴ卵の発眼期およびふ化期の上限水温の推定

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タイトル別名
  • Effects of high water temperature on survival of red-spotted masu salmon eggs
  • アマゴラン ノ ハツガンキ オヨビ フカキ ノ ジョウゲン スイオン ノ スイテイ

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抄録

アマゴOncorhynchus masou ishikawaeは、岐阜県における主要な養殖魚種のひとつである。本県は、全国に先駆けてアマゴの完全養殖の技術を確立した経緯から、アマゴが長年にわたって養殖されている。県内の民間養殖場を魚種ごとに集計すると、アマゴを飼育している軒数は第1位であり、年間100-150トンが市場出荷、加工、河川放流などに利用されている(岐阜県,2020)。下呂支所では、1966年および1967年に採捕された天然アマゴを初代親魚とする系統を継代飼育しており(立川ほか,1969)、飼育開始以来、50年にわたって所内での系統保存ならびに民間養殖場への種卵供給を継続している。下呂支所では井戸の水量に限度があることから、アマゴの飼育には主に河川水(水源は木曽川水系飛騨川)が使用されている。ただし、河川水は増水時に濁りが発生するため、卵の管理には継代飼育開始当時から井戸水が使用されている。下呂支所にけるアマゴの採卵時期は、10月中旬から11月上旬にかけてであり(本荘・原,1973)、50年を経過した現在でも概ね同様である。卵管理の期間も継代飼育開始当時からほぼ変化していない。しかし、近年、卵の生残率が低下しており、その要因として井戸水の水温上昇、あるいは親魚の飼育に使用される河川水と卵の管理に使用される井戸水の水温の不一致が疑われている。そこで本研究では、下呂支所における過去50年あまりの水温データを整理し、アマゴの採卵時期である10月および11月の月平均水温の経年変化を確認した。また、アマゴ卵の発眼期およびふ化期の上限水温を推定するために過去のデータの再解析を実施した。アマゴ卵の適温の検証は、1960年代に立川ほか(1969)、立川・熊崎(1970)、立川・熊崎(1971)によって実施されている。ただし、実験時の水温は立川ほか(1969)で3-4℃ならびに立川・熊崎(1970)で2-3℃の変動幅があり、どちらの事例も水温の制御が不完全という問題があった。そのため、本研究では水温が安定的に制御されていた立川・熊崎(1971)の事例を再解析の対象とした。立川・熊崎(1971)は、13℃、14.5℃、16℃で実験を行っており、ふ化の適温の上限が14.5℃付近であることを示唆しているが、その上限の特定には至っていない。本研究では、立川・熊崎(1971)のデータを使用して一般化線形モデルを作成し、発眼期およびふ化期の上限水温を推定した。なお、本研究の一部は、(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(JPMEERF20202004)により実施した。

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