納税者の視点から見た日本の租税法に関する基礎的研究(Ⅱ)

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タイトル別名
  • A Basic Study of the Japanese Tax Laws Act from the Viewpoint of the Tax Payer (II)
  • ノウゼイシャ ノ シテン カラ ミタ ニホン ノ ソゼイホウ ニ カンスル キソテキ ケンキュウ(2)

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抄録

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第4章では,租税のLegal concept(法的概念)について次の三点から考察する。|第一に国家の立場から見た租税の法的概念(田中二郎説)と国民の立場から見た法的概念(齋藤明説)の違いを明らかにする。国家の立場からは租税の強制性と無償性が強調されるが,国民の立場からは自由意志に基づく財産の提供(寄付)ということが強調される。第二に,「納税者基本権」という概念を提唱した北野弘久の「新財政法学」の考え方を整理する。北野は国民(納税者)の立場から租税の徴収面と使途面の両方を含んだ租税の概念を構築する必要があると述べている点が特徴である。第三に「大嶋訴訟」(1985(昭和60)年3月27日に出された最高裁判所の大法廷判決)の判決文を引用し,司法が租税の意義や機能等をどのように解釈しているのかを整理する。司法(裁判所)においては,租税立法における専門技術的な観点から立法府(国会)の裁量的判断が尊重されるべきことが示され,いわゆる消極的司法という現実が明らかになっている。|第5章では,Tax justice(租税正義)と租税法のBasic Principles(基本原則)に関して,John Rowlsの“A theory of justice”(正義論)を基に考察する。そして,Rowlsの正義論から租税法に共通する3つの基本原則(租税法律主義・納税者主権主義・租税公平主義の各原則)を導出する。

研究ノート 1.はじめに 2.租税根拠論の考察 2.1課税のjustificationとしての租税利益説 2.2課税のjustificationとしての租税義務説 2.3二つの租税根拠学説と租税負担の配分問題 2.4日本国憲法の民主主義的租税観 2.5小括 3.租税原則論の考察 3.1Adam Smithの租税原則 3.2Adolf Wagnerの租税原則 3.3Richard Abel Musgraveの租税原則 3.4Paul Anthony Samuelsonの租税制度の目標 3.5Nicolas Kaldorの優れた税制のための4つの配慮 3.6Joseph Eugene Stiglitzの租税制度の5特徴 3.7John Rawlsの正義の理論 3.8日本における租税原則の解釈 3.9小括 (以上,1章~3章は,『広島経済大学研究論集』第38巻第1号に掲載) (以下,本号) 4.租税のLegalconceptに関する考察 4.1国家の側からの租税の定義 4.1.1田中二郎の租税の定義 4.1.2租税と受益者負担金の相違 4.1.3国民主権と課税権の関係 4.2国民の側からの租税の定義 4.2.1齋藤明の租税の定義 4.2.2国民主権主義と申告納税制度の本質 4.3租税の徴収面と使途面を含んだ租税の定義 4.3.1北野弘久による近代的租税概念の構成 4.3.2租税の使途面である「予算」と「法律」の関係 4.3.3北野弘久が提唱した「新財政法学」 4.3.4北野弘久の「新財政法学」に対する金子宏の批判 4.4最高裁判所の判決にみる租税の定義 4.4.1大嶋訴訟(サラリーマン税金訴訟)の概要 4.4.2原告である大嶋正の主張 4.4.3大嶋訴訟の裁判結果 4.4.4大嶋訴訟における最高裁大法廷の判決 4.4.5大嶋訴訟における最高裁判決の考察 4.5租税の法的定義に関する考察のまとめ 4.5.1法律学における国家の立場からの租税の定義 4.5.2法律学における納税者の立場からの租税の定義 4.5.3租税の使途面を含んだ租税概念の拡大 4.5.4納税者の権利保護を重視する北野弘久の考えを支持する理由 4.6小括 5.Tax Justiceと租税法のBasic Principlesに関する考察 5.1John Rowlsの“A Theory of Justice”(正義論) 5.2Rowlsが説明する原初状態で諸原理が承認されていく順序 5.3Justice(正義)以外の前提条件から導かれるBasic Principles(基本原則) 5.4小括

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