新型コロナウイルスワクチン接種後に発症した 血小板減少を伴う血栓症の一例

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抄録

80 歳代,女性.血管免疫芽球性 T 細胞性リンパ腫( Angio immunoblastic T-cell lymphoma: AITL)に対して CHOP 療法で寛解したが翌年再発.AITL は治療抵抗性となり,緩和療法として自宅療養していた.X 年6月21日にファイザー社のコロナウイルス修飾ウリジン RNA ワクチン1回目の接種を受けた.24 日に右肘腫脹,27 日から食欲低下,尿量減少を認め,28 日から見当識障害が見られ同日受診した.頭部 MRI 検査では右後頭葉に急性の梗塞巣を認めた.血小板減少と炎症所見の増悪がみられ,右下肢膝窩静脈の血栓,右肘頭滑液包炎を認めた.血小板減少を伴う血栓症(Thrombosis with Thrombocytopenia Syndrome:TTS)の発症を疑った.抗菌薬投与と,TTS に対してアルガトロバンの投与後,エドキサバンの内服に変更し,血液凝固異常は改善した.ファイザー社のコロナウイルス修飾ウリジン RNA ワクチンでは,ワクチン惹起性の TTS(VITTS)の報告例はないが,血小板減少を来した症例は報告されている.本症例は基礎疾患の AITL に右肘頭滑液包炎を 併発した可能性も否定できないが,ワクチン接種後に TTS を発症しており興味深い経過であった.

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