船舶衝突法の新たな展開 : 平成三〇年改正商法と船舶衝突条約との乖離

書誌事項

タイトル別名
  • A New Development on the Japanese Law of Marine Collision
  • センパク ショウトツホウ ノ アラタ ナ テンカイ : ヘイセイ サン〇ネン カイセイ ショウホウ ト センパク ショウトツ ジョウヤク ト ノ カイリ

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抄録

わが国商法の船舶衝突規定が、渉外関係の有無によって適用を異にしていることが不合理な結果を生来しているとの認識のもと、長きにわたって立法論として、一九一〇年の「船舶衝突ニ付テノ規定ノ統一ニ関スル条約」(以下、「衝突条約」という)に基づき商法を改正すべきことが要望されてきた(昭和一〇年商法改正要綱二二五)。衝突条約は、双方過失による衝突における第三者に対する物的損害についての分割責任主義を採用している(条約四条二項)。また、衝突条約は、財産損害と人身損害とを区別することなく衝突事故のあった日から時効が進行することを定めている(条約七条一項)。これらの規律の合理性が、渉外問題における法律関係の画一的処理の要請のみから正当化されるものだとするならば、これらの規律を国内法である商〇法に及ぼす論理必然性はない。むしろ、国内における陸上運送や航空運送とのバランスから、法律関係の画一的処理よりも被害者救済を重視すべきとの価値判断に立つ場合には、衝突条約の規律は採用されるべきではない。条約の規律を採用しなかった平成三〇年商法改正の立場は妥当である。

収録刊行物

  • 法学新報

    法学新報 126 (7-8), 183-203, 2020-01-15

    法学新報編集委員会

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