グラフニューラルネットワークを用いた無線点群伝送に関する一検討

抄録

近年,3 次元情報を表現したボリューメトリックコンテンツと呼ばれる,点群などの高精細な 3 次元データを用いた臨場感のあるコンテンツが注目されている.さらに,パソコンや携帯端末などコンテンツを視聴する形態は多様化している.そのような様々な環境下で高品質な視聴体験を提供するためには,データ量を削減し,データ品質を維持しながら伝送を行う必要がある.点群を無線伝送路を介して伝送する場合,各ユーザ端末がそれぞれ限られた帯域の中で 3 次元情報をより正確に表現できることが重要となる.デジタル点群符号化は点群伝送に要するトラフィックを効率的に削減する.一方で,デジタル符号化方式で導入される量子化とエントロピー符号化は各ユーザ端末で生じる伝送路品質の変動や品質差に起因する品質劣化を招く.本研究では,グラフニューラルネットワーク (Graph Neural Networks: GNN) を用いた無線点群伝送方式を提案する.具体的には,グラフオートエンコーダ (Graph Auto-Encoder: GAE) 構造を用いて,点群を符号化シンボルに圧縮して,受信したシンボルから点群を復元する.提案方式は既存方式で課題とされていたクリフ効果やレベリング効果を防止することに加え,複数ユーザ間の可用帯域差に対処する.各ユーザ端末で生じる伝送路品質の変動やユーザ間での帯域差による品質の劣化を解決するために,提案方式は 1) 符号化シンボルを伝送シンボルに直接マッピングするアナログ変調によって各ユーザの伝送路品質に応じた点群品質を確保すること,2) 学習時において符号化シンボルに対するべき分布にしたがうドロップアウトを導入して利用可能な帯域幅に応じた点群品質を確保することをそれぞれ実現する.評価結果において,提案方式は既存のデジタル点群符号化方式,アナログ点群符号化と比較して優れた点群品質を提供できることがわかった.

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