新旧教育基本法における「個人」の位置づけと意味づけ : 「尊厳」と「価値」との違いを踏まえた覚え書き

書誌事項

タイトル別名
  • The Location and Implications of the Word “Individual” in Both Old and New Basic Act on Education : Particular Note of the Difference between “Dignity” and “Value” of Individual
  • シンキュウ キョウイク キホンホウ ニ オケル 「 コジン 」 ノ イチズケ ト イミズケ : 「 ソンゲン 」 ト 「 カチ 」 ト ノ チガイ オ フマエタ オボエガキ

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抄録

本稿は,「個人」という日本語が,新旧の教育基本法において,どのように位置づき,どのように意味づけられているかについて明らかにするとともに,それを手がかりとして「個人」概念それ自体を多角的に深めていくことをめざすものである。「個人」を含む表現は,旧法では「個人の尊厳」と「個人の価値」の 2 カ所,現行法では「個人の尊厳」・「個人の価値」・「各個人の有する能力」・「個人の要望」の 4 カ所存在する。旧法において「個人としての尊重」規定(日本国憲法13条)を体現しようとする意味合いの強かった「個人の尊厳」概念については,現行法では,教育によって育成されることを期された人間像を彩る複数の形容句の一つに格下げされている。また,旧法で「教育の目的」の文脈で語られていた「個人の価値」概念は,現行法では,複数ある「教育の目標」の一つに格落ちし,能力主義的文脈に水路づけやすくなっている。こうした顕著な変化を踏まえて,憲法改正議論として,憲法13条で「個人」を「人」へと置換したり,教育基本法における教育目的たる「人格の完成」を憲法26条 3 項として書き加えようとしたりする動きについては,特に注視する必要がある。

収録刊行物

  • 法学新報

    法学新報 128 (7-8), 315-350, 2022-02-28

    法学新報編集委員会

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