口蓋床の厚さが嚥下音に及ぼす影響

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  • 小嶋, 千栄子
    朝日大学歯学部口腔機能修復学講座歯科補綴学分野
  • 山村, 理
    朝日大学歯学部口腔機能修復学講座歯科補綴学分野
  • 藤原, 周
    朝日大学歯学部口腔機能修復学講座歯科補綴学分野

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抄録

【目的】高齢者の口腔機能の維持やリハビリテーションが歯科分野において課題となっており、嚥下機能や治療効果の評価を行う機会が増えている。今回、全部床義歯床口蓋部の厚みに注目し、頸部聴診法における術者の感覚である「きこえ」を定量化し、簡便で客観性に富んだ嚥下音の評価を試みた。【被験者および方法】被験者は、健常有歯顎者10名とした。各被検者ごとに、厚さが1.0mm(P1)と3.0mm(P2)の2種類の実験的口蓋床を製作した。無響音室にて、被験者に口蓋床未装着(N)で聴診器をあて、水10ccの嚥下音の記録を行った。同様に、実験的口蓋床を各々装着した時(P1、P2)の嚥下音を記録した。音質評価ソフトを用いて、ラウドネス、シャープネス、ラフネスの解析を行った。また、音声分析ソフトにて、嚥下音持続時間、Ⅰ音、Ⅱ音、Ⅲ音およびⅠ音とⅡ音合計の嚥下音持続時間、嚥下音開始時から波形が最大値に達するまでの時間およびピッチ曲線高低差を計測した。得られたデータをもとに統計処理を行なった。 【結果】ラウドネスは、口蓋床装着時に値が大きくなる傾向を示し、対照(N)とP2との間に有意な差が認められた。 嚥下音持続時間は、口蓋床装着時に延長する傾向が認められ、対照(N)とP2との間、P1とP2との間にそれぞれ有意に大きな値を示した。Ⅰ音とⅡ音合計嚥下音持続時間は、口蓋床装着時、P1においてわずかに短縮される傾向を示したが、有意差はなかった。 【考察】ラウドネスの増大は咽頭挙上筋や咽頭収縮筋などの運動変化によるものであると考えられる。また、嚥下音持続時間の延長、Ⅰ音とⅡ音合計嚥下音持続時間のわずかな短縮は、嚥下終了後の喉頭の開放に時間を要したと考えられる。 【結論】義歯口蓋部の厚さの決定にラウドネスの考察は有用であり、嚥下音から厚みを決定できる可能性がある。また、嚥下音持続時間の計測、分析が頚部聴診法の確立の一助となる可能性が示された。

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