犬歯の埋伏による重度歯根吸収を呈した上顎切歯に対して下顎小臼歯の自家移植を行った歯性上顎前突の一治療例

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タイトル別名
  • A case of maxillary dental protrusion with severely root resorbed-maxillary incisors caused by impacted canine treated with autotransplantation of the mandibular premolar
  • 埋伏歯による上顎切歯歯根吸収に対して下顎小臼歯の移植を行った歯性上顎前突症例

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抄録

埋伏歯は外科的な開窓,牽引処置が必要となるだけでなく,萌出方向の異常による隣在歯の歯根吸収といった弊害も起こしうる.今回我々は,犬歯の埋伏によって上顎4 前歯に歯根吸収が生じた患者に対して,下顎小臼歯を移植し動的矯正治療を行い,良好な治療結果が得られたので報告する. 患者は初診時年齢12歳9 か月の男子であり,近医にて上顎両側犬歯の埋伏による上顎4 前歯の歯根吸収を指摘され,当科を紹介された.上顎4 前歯のうち,最も重度の歯根吸収を呈した上顎右側側切歯を抜去し,上顎両側犬歯の開窓,牽引処置を行った.13歳10か月時の再診断の結果,動揺が大きく保存困難であった上顎右側中切歯の抜去および下顎右側第一小臼歯の上顎右側中切歯部への移植を施行し,マルチブラケット治療を開始した. 2 年4 か月の動的治療により,わずかに上下顎歯列正中の右方偏位が認められたものの,緊密な咬合を獲得することができた.保定6 か月経過時に上顎右側中切歯部移植歯の最終補綴を行った.現在,保定1 年9 か月経過し下顎骨のわずかな晩期成長が認められたものの,咬合は安定しており,上顎右側中切歯部に移植した下顎小臼歯および歯根吸収が認められた上顎左側中,側切歯に関しても,著しい変化もなく経過良好である.今後,移植歯を含め長期間にわたる保定観察を継続していく予定である.

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