不安に覆われた政治のなかで交差するアクター : フランスの「黄色いベスト運動」に関する調査を手がかりに

書誌事項

タイトル別名
  • Acteurs interséctés en France au temps de la politique d'insécurité : D'aprés les enquêtes sur le mouvement des gilets jaunes
  • フアン ニ オオワレタ セイジ ノ ナカ デ コウサ スル アクター : フランス ノ 「 キイロイ ベスト ウンドウ 」 ニ カンスル チョウサ オ テガカリ ニ

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抄録

グローバル化への適応において,新たな包摂を可能にするデモクラシーは未だ立ち上がらず,セキュリティ保障は自明ではなくなり,不安に覆われた政治が展開しているとされる。しかし,フランスの黄色いベスト運動にかんする調査研究が示すのは,国を二分するかのような裂け目が複雑に交差し,ニュアンスに富んだ姿である。本稿は,黄色いベスト運動にかんする調査に基づき,分断の政治的構築と,分断というナラティブに回収されない階級・階層を越えた節合の可能性を探究するための素材を整理する。まず,運動参加者の属性などを概観した上で,公共空間の創出と運動内外の代表観について検討する。次に,有権者が,「委任された者」の運動であるとの認識を共有していることをみる。最後に,経済的自由主義と文化的自由主義に関する意識・要求のなかに,左派・リベラル,社会民主主義の「ジレンマ」の複雑な様相を読み取る。不安が覆う政治のなかに,静態的な分断・亀裂を見出すのではなく,交差するアクターと,その利益・価値の節合条件が存在しており,分断線を引いてセキュリティを担保する安全保障化の政治に抗する戦略をとることの可能性を確認できると本稿は主張する。

収録刊行物

  • 法学新報

    法学新報 128 (11-12), 75-103, 2022-03-31

    法学新報編集委員会

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