中世ロマンス『ガウェイン卿と緑の騎士』における頭韻詩の伝統とその乖離

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タイトル別名
  • Conventionalism and its Deviations from English Alliterative Poetry in Medieval Romance Sir Gawain and the Green Knight

抄録

イギリス中世ロマンスの傑作である『ガウェイン卿と緑の騎士』は、14世紀後半の中英語時代に成立した頭韻詩である。この詩は、フランス語系の詩から持ち込まれた脚韻というよりもむしろ、ゲルマン詩の伝統を受け継いだ古英語の強勢韻律法で構成される頭韻詩長詩行(alliterative long line)を特徴とし、頭韻と脚韻の2つの韻律法を結合させ、北西ミッドランド方言で書かれている。本論では、この詩に用いられた語彙や語法に注目しつつ、主人公ガウェインの描かれ方が、騎士の絶対的卓越を強調する頭韻詩の伝統をいかに受け継ぎ、同時にその描写がいかにガウェインの言動や行動とはズレが生じているのかを考察している。もはや時代遅れとなった理想化された伝統的騎士像を、ロンドンから隔絶された地で復活させたガウェイン詩人は、時代を反映した等身大の騎士像を描いたといえる。

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