『琴歌譜』所伝部の記述意識

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タイトル別名
  • 『 コトウタ フ 』 ショデンブ ノ キジュツ イシキ

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抄録

『琴歌譜』は大正末期の発見から今日まで約一〇〇年の研究の蓄積があるが、歌の所伝というべき散文部については俯瞰的な研究が乏しく、その部分を指す学術用語すら定まっていない状態である。本稿ではその部分を「所伝部」と名づけた。『琴歌譜』は一部の歌にのみ所伝部を附し、その所伝部も一つの歌について単数附される場合と複数附される場合がある。所伝部のこの記述意識が那辺にあるのかを探るのが本稿の目的である。『琴歌譜』は『日本書紀』、『古事記』両方に同一歌があるものには『日本書紀』からのみ歌と適合する所伝を引用して記し、『古事記』にのみ同一歌があるものについては『古事記』を引用した所伝部と、より歌と適合する別の所伝部を記す。『古事記』の歌と所伝の結びつきが当然の所与でないことは近代の歌謡研究者の共通認識であるが、平安時代前期の大歌所は既にこの意識をもって歌と所伝の結びつきを追究していたのである。

identifier:KG003100011792

収録刊行物

  • 京都語文

    京都語文 31 129-151, 2024-02-29

    佛教大学国語国文学会

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