博物館内ツアーにおいて観客にガイドの物語への参与を促す実践

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タイトル別名
  • Practices of inviting visitor involvement in storytelling within museum guided tours

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説明

本稿では、2007 年と2008 年に収録した全米日系人博物館におけるガイドつきツアーのデータからガイドが観客に物語を語る活動に焦点を当て、その活動においていかにガイドが観客に物語への参与を促すのか、その実践を分析した。4つのツアーを分析した結果、主に2種類の実践(言語・非言語行動)がみられた。1つは、そこに展示してある展示物や日系人収容所に関する知識およびそれに関する事柄を聞いたことがあるかどうかなど経験を問う実践、もう1 つは、過去の出来事(歴史的事実)を現在の状況に関連づける実践である。さらに、これら2 つの実践は物語連鎖の特定部分に現れることが明らかになった。問いかけは、主に物語の開始部分および展開部分に現われ、過去の出来事を現在の状況へ関連づける実践は、物語の展開部分および終結部分に現われる。また、ガイドによる2 つの実践に対する観客の反応にも着目し、ガイドから観客への問いかけは、観客の返答が期待されるため「直接的な参与を促す実践」であること、過去の出来事を現在の状況に関連づける実践については観客の反応(言語・非言語行動)がさほど期待されないため「間接的な参与を促す実践」であることを指摘した。本稿では、博物館内ツアーにおける物語において、ガイドによる観客への問いかけや過去の出来事を現在の状況に関連づける実践が、観客にガイドの物語への参与を促すための重要な手段であることを明らかにした。

収録刊行物

  • 阪大日本語研究

    阪大日本語研究 33 1-31, 2021-02

    大阪大学大学院文学研究科日本語学講座

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