機械翻訳(MT)の過程と翻訳ストラテジーの分析-大学生を対象とした調査を基に-

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タイトル別名
  • Analyses of machine translation process and translation strategies -Based on a survey of university students-

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抄録

外国語学習において機械翻訳(以下、MT: Machine Translation)は身近な存在となっている。上手に活用すれば、学習ツールとして英語学習を支援できると考えられる。そこで、本研究では、大学生を対象としてMT使用に関する実態調査を行い、1)MTの使用方法、2)翻訳されたもの(訳出)が適切かどうかの確認方法、3)翻訳(英訳・和訳)がうまくいかないときの対処方法等を明らかにし、4)MTの学習ツール、学習リソースとしての可能性、5)「訳す」という行為の英語学習における有用性について考察した。データは、MT使用に関する5件法、選択式の設問、及び、自由記述で収集した。自由記述の分析にはKH Coder 3によるテキストマイニングを援用した。分析の結果から、以下の点が明らかになった。1)学生はMTを主に辞書的に用い、他のリソースと併用して学習ツールとして使用している。2)訳出が意図を正しく表現しているか、文法的に正しいか等を確認している。3)翻訳がうまくいかないときには、入力語句を変更する等、一種の「翻訳ストラテジー」を見出して対処している。4)意図した英文ができるまでの過程では、MT以外のリソースも援用し、調べたり修正したりする様々な活動を行い、学習を主体的・積極的・自律的に進めている。5)訳出を得る過程では、メタ言語の認知を伴う思考が行われており、訳すという行為が一定の言語知識、メタ言語知識の構築に寄与することが示唆される。以上は、本調査から言えることであり、英語習熟度等によって異なる可能性もある。また、本調査は学生がMTを使用して適切な訳出を得るための過程に焦点を置いたものである。よって、MT使用のデメリット、危険性、英語学習への悪影響等については明らかになっていないが、MT使用については、これらと併せて考察することが重要であり、この点は課題となった。

収録刊行物

  • 教科開発学論集

    教科開発学論集 12 1-10, 2024-03-31

    愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科共同教科開発学専攻(後期3年のみの博士課程)

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