ヘルマン・コンリング(1606~81年)研究の現状と展望 ―ドイツ法制史・国制史とトランスナショナルな共和主義研究の邂逅―

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タイトル別名
  • Rethinking Hermann Conring(1606-1681)Between German Constitutional History and Transnational Intellectual History
  • ヘルマン ・ コンリング(1606~81ネン)ケンキュウ ノ ゲンジョウ ト テンボウ : ドイツ ホウセイシ ・ コクセイシ ト トランスナショナル ナ キョウワ シュギ ケンキュウ ノ カイコウ

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抄録

ヘルマン・コンリング Hermann Conringは,17世紀ドイツの人文学者であり,主に法制史,国制史研究の分野で注目されてきた。彼は,根拠不明の伝承に即した法制史記述を排除し,史料に根差した実証的な法制史研究を創始したと称えられている。特に,ドイツにおけるローマ法の継受が皇帝の勅命で一挙になされたのではなく,学識法曹による裁判実務の中で徐々に進められてきた事実を明らかにした。それゆえ,後者が学び親しんだゲルマン法に光を当てた。結果として彼は,ロマニステンに対抗する,ゲルマニステンの開祖とも称された。 このような見解は妥当であるとはいえ,ケンブリッジ学派に代表される思想史研究や,ネオ・アリストテレス派の哲学史研究によれば,コンリングが置かれた同時代の文脈を十分には把握できていないという。コンリングはアリストテレス主義者として,ドイツの法や政治の歴史を精査した上で,それらが君主政と共和政の混合政体であるのが望ましく,また,そのように存在してきたのであるから,いにしえのローマ帝国に倣った皇帝の専制は認められないとの趣旨で,ローマ法の継受に関する誤った伝承の見直しを迫ったというのである。 本稿は,コンリングをトランスナショナルな共和主義の展開に位置づける近年の成果を傾聴しつつも,あらためて彼がもったドイツ国制史上の意義を再考する。

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