「危機の心理学」の受講生はコロナ禍の危機をどう捉えたか─研究と教育の有機的なつながり─

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  • How did the students of the “Psychology of Crisis” course perceive the crisis of COVID-19?

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抄録

本稿は、コロナ禍のなか、『危機の心理学』の受講生が、この「危機」をどのように捉えたかについて調査した結果を報告するものである。『危機の心理学』は、「危機」が心理学的な側面を持つことを、我々の身近にある様々な「危機」を通じて解説した科目である。新型コロナウイルスの感染が拡大する以前に開設した科目のため、感染症にまつわる「危機」は、授業テーマに取り上げられていなかったが、リスク認知や孤独など、コロナ禍の「危機」に共通する内容が含まれていた。そのことから、新型コロナウイルスの感染が拡大するにつれ、学内外からそれを指摘する声が寄せられた。そこで『危機の心理学』の受講生に、2021年11月と2023年2月の2度にわたり、コロナ禍の「危機」に関する調査を行った。その結果、新型コロナウイルスやそのワクチンに対しては、インフルエンザやそのワクチンのように以前から馴染みのあるハザードに比べて高いリスクを認知していることや、友人などとの対面での会話は、回数が多いほど孤独感が低くなる傾向が一貫して見られることなど、授業内容に関連した様々な知見を得た。加えて今回の調査では、コロナ禍で新たに立ち現れた「危機」についても尋ね、進行中の国際比較研究と類似する傾向を確認した。 本稿で報告した調査は、研究と教育の2つの側面を持っている。放送大学の学生は、年齢、居住地、職業など、他の大学の学生に比べ多様な属性を持っており、こうした学生を対象とした研究には発展性がある。同時に、今回のように授業内容と連動した研究を行い、その結果を学生にフィードバックすることは、学生に授業内容についての洞察を促すことになり、教育的な意義も大きい。このような授業科目を軸とした研究と教育の有機的なつながりが、今後も進むことが期待される。

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