静電容量型加速度センサに対する音波照射を利用した加速度データへの情報埋め込み手法

説明

スマートフォンやタブレット,スマートウォッチ,組み込み機器などのあらゆるデバイスに加速度センサが搭載され,端末の状態推定,利用者の行動計測や健康管理などのさまざまな用途に使用されている.静電容量型加速度センサに対して音波を照射することで加速度データを変化させる攻撃が提案されている.本研究ではこの攻撃を瞬間的かつ連続的に行うことで,加速度センサに任意のビット列を埋め込む手法を提案する.提案手法によって,加速度センサを用いて人の行動などの情報を収集する際に,メタデータやアノテーションを加速度データに直接書き込むことができ,別ファイルとして保持しておく必要がなくなる.また,デバイスを保持した人に音を照射することで場所のIDを埋め込むこともできる.複数のデバイスに対して同時にビット列を埋め込むことでグループ化や時系列の同期ができる.デバイスがバックグラウンドで加速度データをモニタリングしていれば,照射した音に応じたアプリの起動も可能となる.提案手法では,埋め込むビット列を音響の有無で表現した音データを作成し,スピーカで加速度センサを内蔵したデバイスに向けて照射し,音波照射の影響を受けた加速度センサデータからビット列を抽出する.予備実験では,加速度センサMPU-9250を搭載する多機能センサに対して周波数5,200Hz,センサ到達時の音圧128dBで音波を照射したとき,センサデータのx軸成分やy軸成分に著しい加速度変化が瞬間的に起こることが分かった.また,加速度センサを搭載したスマートフォンに対して周波数3,240Hz,センサ到達時の音圧119dBで音波を照射したときも,センサデータのy軸成分やz軸成分に瞬間的な加速度変化が起こることが分かった.評価実験から,静止させた多機能センサに対して10bitの2進数情報を全パターン正確に抽出することができ,スマートフォンに対しても,デバイスの装着や把持をした状態に対しても高い精度での情報抽出を行うことができた.

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