マッチング指標から見る保育士をめぐる一考察

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タイトル別名
  • A Consideration on Nursery Teacher Labor Market from Matching Efficiency
  • マッチング シヒョウ カラ ミル ホイクシ オ メグル イチ コウサツ

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抄録

本研究は保育士をとりまく労働市場の実態,有効求人倍率,採用率・退職率,賃金水準などについて統計調査結果から明らかにするものである。公的統計の調査結果から保育士人材確保の諸施策に関する評価のための資料とする。 女性保育士の賃金水準は女性労働者の平均値よりも低い。保育士と女性労働者を比較した相対賃金の水準は近年拡大傾向にある。また,年齢が上がるにつれて,相対賃金の水準は開いており,近年その開きは増している。他の職業に比べて,女性保育士の賃金水準の低さが保育士不足の原因につがっていることを示した。 保育士人材の確保のため,ハローワークのマッチング機能が作用しているかどうかについて都道府県別に保育士の就職件数,有効求人数,有効求職数から推計した。その結果,保育需要の増加によって保育士のマッチング機能は年々低下していること,東京都,神奈川県,千葉県,埼玉県,大阪府など都市部では低く,福井県,岩手県,秋田県,山形県,宮崎県など地方部では高いことを示した。地域特有の保育事情が存在していることもあり,地域間のマッチング機能の作用にはばらつきが見られる。参考値として,職業計についても同様に推計した。その結果,マッチング機能は東京都や神奈川県,愛知県など大都市部では弱く,岩手県,秋田県,鹿児島県,宮崎県などの地方部では高い。 求人情報はハローワーク以外の場,学校,求人広告,民間紹介会社などでますます入手できるようになり,ハローワークの職業仲介機能が低下している。また,日本の労働市場では新卒一括採用の果たす役割が大きい。そのため,新卒者を除いた求人・求職データからでは,労働市場のマッチング機能の全貌を把握しているものではない。注意すべき点は多いが,近年保育士人材確保のために様々な対策が講じられている中で,本研究から都市部での保育士人材確保がますます困難になっている状態が改めて示された。

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