Developing Crime Prediction Analytics

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  • 犯罪予測技法の展開―近接反復被害分析を中心として―
  • ハンザイ ヨソク ギホウ ノ テンカイ : キンセツ ハンプク ヒガイ ブンセキ オ チュウシン ト シテ

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本稿は,近年英米を中心に展開がみられる犯罪予測(crime prediction)論を考察するものである。わが国を含め世界的な犯罪減少傾向にありながら,犯罪不安感自体は必ずしも改善されない状況の中で,犯罪の事前予防論が台頭し,その延長上で犯罪予測論が議論されており,現に犯罪予測技法の開発とその適用が進みつつある。犯罪予測が可能になれば,警察などの法執行機関の人的物的資源を効率的に活用することができ,その結果,被害発生を回避し,住民の犯罪不安感を低減できるからである。その理論的根拠としては種々提示されているが,なかでも有力なのが反復被害化(repeat victimisation),さらには近接反復被害化(near repeat victimisation)の議論である。 反復被害は,主として未然予防を考究する環境犯罪学者が研究対象としてきた事項で,ひとたび被害にあった標的(人,物,場所)は再び被害に遭う可能性が高いという議論であり,反復被害現象は現に種々の統計や調査によって明らかにされている。そこで,一部の標的がしばしば数度の被害を受けているという実態を基に被害予測,言い換えれば犯罪予測は可能であるとするのが環境犯罪学者の主張である。 反復被害化が発生する理由としてリスク偏在性,イベント依存性などが指摘されており,犯行者の視点からも同じ標的を狙う合理性が確認されている。このほかにも動物生態学を応用した最適採餌理論などが援用されており,再被害化・反復被害化の構造が多角的に検討されている。このように,理論的にも整備されつつある犯罪予測論につき,本稿では,とくに近接反復被害に焦点を当て,犯罪予測の技法を中心に議論を進める。 もっとも,犯罪予測論については,詳細な個人情報を含むビッグデータの扱いや場所的な監視に関して,人権侵害的側面や市民的自由の喪失等の課題がみられる。わが国でも一部の都道府県警察において犯罪予測技法を取り入れ犯罪抑止を目指す動きがみられるが,これらの問題をクリアすることが課題となっている。考えてみれば,犯罪予測によって地域住民の犯罪不安感の低減を探求するのに住民の人権侵害をもたらすのは自己撞着であり,その意味でも,法学者らがこれらの動きに関わり,良好な犯罪対策を担保することが求められよう。

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