ワーズワスの人間愛 : 「決意と独立」再考

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タイトル別名
  • From Love of Nature to Love of Man : A Reconsideration of Wordsworth’s “Resolution and Independence”
  • ワーズワス ノ ニンゲンアイ : 「 ケツイ ト ドクリツ 」 サイコウ

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抄録

ロマンティシズム(Romanticism)はイギリスにおいて19世紀初頭に栄えた文学思潮である。それは,P.B.シェリー(P.B.Shelley)の詩を借りて言えば,「ある人へ」(“To―”)で歌った「限りなきものにたいするあこがれ」である。ロマン派の作家たちは,感情,想像力を重視した。人間の尊厳を知識ではなく,感情に求めたのである。ウイリアム・ワーズワス(William Wordsworth)はイギリス・ロマン派のなかでも最大の詩人である。ワーズワスは,1770年に,崇高な自然美にあふれたイギリス湖水地方に生まれ,1850年に亡くなるまで80年という当時では長い人生を生きた。自然詩人と呼ばれるワーズワスは,自然を讃える詩を生涯創作した。しかしワーズワスの目指したことは自然に対する愛によって到達することができる人間の尊厳であった。  ワーズワスの詩的才能が最高潮に達した「偉大な10年」と呼ばれる時期(1797–1807)以後の作品は詩的評価が低いとされている。しかしワーズワスは生涯にわたって人生の苦悩,悲哀に打ちひしがれることなく生きる人間の尊厳を作品の中で歌い続けようとしたのである。本稿では「偉大な10年」の直後に創作された作品「決意と独立」(“Resolution and Independence”)を読むことによって自然に対する愛から人間への愛へと辿っていったワーズワスの心の変遷を考察したい。

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