奈良教育大学附属幼稚園のデジタルむし図鑑

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タイトル別名
  • ナラ キョウイク ダイガク フゾク ヨウチエン ノ デジタルムシ ズカン
  • A Digital Field Guide to Small Animals Found in the Attached Kindergarten of Nara University or Education

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抄録

本研究では、園児の身の回りの生き物への興味の芽生えを手助けする教材づくりを目的とし、インターネット上で活用できる「奈良教育大学附属幼稚園のデジタルむし図鑑」の作成を行った。奈良教育大学附属幼稚周の園庭及びこどもの森を調査地とし、2011年4月から2011年11月上旬にかけて計32回の採集を行った。採集調査の対象は昆虫類に限らず、 "いもむし" や "でんでんむし" など、園児が "むし" と呼ぶものを広く対象とした。本学付属幼稚園では、園児が登園してから、クラスごとでの活動が始まるまでの間に、1時間程度「園児が自ら選び自由に遊ぶ時間」がある。その時間に幼稚園に出向き、園児と共にむしの採集を行った。採集された生物は、採集場所を記録すると共に、生きた状態においてハイビジョンビデオカメラにより撮影し、得られた動画は画像管理ソフトウェアを使用してパソコンへ画像を取り込み・編集を行った。ハイビジョンビデオカメラを使用により動画から高画質の写真を切り抜くことが可能であり、カメラでの撮影が難しい "動きの速い" むしの画像も得ることができた。結果として、160種を超す生物の画像を収集した。この内、最終的に種名まで同定できたものは、カメムシ目27種・ハチ目13種・バッタ目15種・トンボ目7種・カマキリ目3種・ハエ目10種・甲虫目19種・チョウ目45種・ゴキブリ目2種・クモ目6種・オオムカデ目1位・オビヤスデ目1種・等脚目種・十脚目1種・柄眼目3種・無尾目2種・有鱗目1種の計157種である。また、156種の内、昆虫類以外の "むし" は、クモ目・オオムカデ目・オビヤスデ目・等脚目・十脚目・柄眼目・無尾目・有鱗目の16種であった。全32回の採集回数中、内園児の自由時間に幼稚園に出向き、園児と共にむしの採集を行った回数は23回であったが、実際に園児が見つけてきてくれる "むし" は、ダンゴムシやバッタの仲間など見つけやすく、捕まえやすい種に偏っていたので、園児が捕捉可能な種は今回の研究でほぼ押さえる事ができたと考えられる。一方、独自の採集で集めた大多数の種は昆虫に偏った結果となった。園庭で園児が採集可能な普通種以外にも、多くの昆虫を記載出来た結果ではあるが、園児にとっての "むし" が反映されたとは言い難く、今後引き続きデータの蓄積が必要と考えられる。本研究で作成したデジタルむし図鑑は、実際に幼稚園での調査を行ったことにより、まさにその現場で観察される "むし" の図鑑を作成することができたことが大きな特徴である。ホームページに関しては、2012年4月25日に運用を開始した(http://biol-Zukan-3.nara-edu.ac.jp/homepageTOP.html)。同定の完了した156種の個々の生物のページは、各検索ページとリンクを形成し、多彩な検索が可能となっている。この教材の活用にあたっては、無線LANルーターやiPadを併用したインターネット接続により、保育者と園児たちが採典現場でインターネット図鑑を使用できる環境が必要とされる。また、園児たちにも園庭やこどもの森での自然観察や遊びのなかで、自らむしを探したり、見つけたむしを調べたりできるよう、園児向けの小冊子を作成し、2012年5月16日に園児への配布も行われた。尚、これらは、本学理数教育研究センターの支援のもとに行われた。

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