液体クロマトグラフィ/質量分析法による葉酸類の定量に関する研究

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タイトル別名
  • エキタイ クロマトグラフィ シツリョウ ブンセキホウ ニ ヨル ヨウサンルイ ノ テイリョウ ニ カンスル ケンキュウ
  • Liquid Chromatography/Mass Spectrometric Quantitative Analysis of Folic Acid Derivatives

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説明

葉酸は、生体に必要不可欠なビタミンB群のひとつである。葉酸欠乏症として巨赤芽球性貧血は古くから知られているが、最近では妊婦の葉酸欠乏症によって胎児が二分脊椎など先天異常を引き起こす危険性が高いことが報告されている。そのため、葉酸摂取の必要性が再認識され始めた。しかし、葉酸の存在形態が複雑であることから、食品中の葉酸濃度を正確に把握することは難しいとされてきた。葉酸化合物の存在形態は様々であり、大きくは酸化型と還元型に分けられ、更に、天然物中にはグルタミン酸ユニットが2〜9個結合したポリグルタメート体が多く存在している。一般的に葉酸と言うと、酸化型葉酸であるfolic acid(=pteroylglutamic acid)をさす場合と、葉酸化合物を総称した場合がある。したがって、食品を対象とした葉酸の定量分析には、複雑な前処理が必要であった。本研究では、食品中の葉酸の定量を目的として、簡単な前処理と液体クロマトグラフィ/質量分析(LC/MS)法を用いる新しい分析方法の開拓を目指した。ほうれん草の葉を秤量し、その10倍量の20mM酢酸アンモニウム水溶液(pH8、0.2mMメルカプトエタノールおよび10mMアスコルビン酸を含む)を加え、乳鉢で粉砕した。粉砕したほうれん草サンプルを、加熱処理(90℃、20分間)し、遠心分離(3000rpm、10分間)後、その上清を回収した。このサンプル中の夾雑成分を除去する目的で、前処理用カラムにより二段階の固相抽出を行い、固相抽出したほうれん草サンプルをLC/MSで測定し、標準試料を用いて作成した検量線により、ほうれん草中の葉酸濃度を算出した。移動相として10%アセトニトリルを含む5%酢酸水溶液を用いた結果、folic acid、PteGlu2、およびPteGlu3を完全に分離することができた。イオン化モードをポジティブに設定することにより、folic acid、PteGlu2、およびPteGlu3は、いずれもプロトン化分子関連正イオン[M+H](+)として検出された。オクタデシルシリル(ODS)シリカを用いた前処理用カラムによる2段階の固相抽出を行い、標準試料を用いた固相抽出では、回収率が79〜87.5%であった。ほうれん草からの抽出液をLC/MSで測定した結果、酸化型葉酸のPteGlu3が検出され、濃度的にはその他の酸化型葉酸に比べて高いことが分かった。folic acidも極微量ながら検出されたが、PteGlu2は検出されなかった。本研究により、ほうれん草から葉酸化合物が抽出され、LC/MS法によって十分に定量できることがわかった。このことは本法が、従来のような複雑な前処理を必要とせず、簡単な前処理によって連続分析ができるという点で有用であることを示唆している。

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