新興市場経済の金融通貨政策と中央銀行のバランスシート

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タイトル別名
  • シンコウ シジョウ ケイザイ ノ キンユウ ツウカ セイサク ト チュウオウ ギンコウ ノ バランス シート
  • International Reserves, Exchange Market Interventions, and Central Bank Balance Sheet in Emerginag Market Economies

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抄録

近年では新興市場経済諸国においても中央銀行の独立性が強化され, 国内物価の安定を最優先する金融政策への移行が進みつつある。しかし新興市場経済では中央銀行の独立性やルール・ベースの金融政策に対する理解が必ずしも十分でなく, 中央銀行が将来の政府の介入の懸念を払拭しがたい状況にある。また, 一般に新興市場経済は外生ショックに脆弱であり, 金融通貨当局としても内外資本移動や為替レートの動向に神経質にならざるを得ない。新興市場経済では外国為替市場介入や外貨準備管理に関する方針が曖昧なまま中央銀行が裁量的なオペレーションを行っているケースが多いが, このような状態は長期的な物価の安定を追求する上でも好ましくない。本稿では新興市場経済において中央銀行の組織防衛への意欲や政府との貨幣発行益の配分ルールが国内・対外金融政策にどのように影響するかを分析し, 為替レートや外貨準備の管理に関して中央銀行と政府がどのような役割分担を行うことが望ましいかを考察する。本稿の分析によれば, 外貨準備に関しては対外流動性の維持を目的としたものと平時の為替市場介入を目的としたものを峻別し, それぞれに関して政府と中央銀行の間で保有規模やコスト負担に関するガイドラインを作成することが望ましい。また, 外国為替市場介入に関しても両者の間で基本的な政策目標を共有しておくことが望ましく, 外貨準備保有高の目標値や為替市場介入の方針と国内の物価目標が両立可能かどうかもあらかじめ検討するべきである。

収録刊行物

  • 経済学雑誌

    経済学雑誌 107 (4), 64-89, 2007-03

    大阪市立大学経済学会

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