「憑きもの」と結婚差別―被差別部落との比較を通して―

書誌事項

タイトル別名
  • “Tsukimono” and Marriage Discrimination:As Compared with Studies of Buraku

説明

本稿は日本社会において差別対象とされていた/されている2 つの集団のうち、特に結婚差 別に注目して、その差異について検討するものである。一つはかつての日本社会で大きな社会 問題ともなった憑きもの筋への結婚差別であり、もう一つは被差別部落出身者への結婚差別で ある。  憑きもの筋への結婚差別と被差別部落出身者への結婚差別には、親族が結婚差別の大きな要 因・障害になっていることや、結婚による親戚関係の断絶、将来の子孫たちに累が及ぶことを 恐れるといった共通点があり、両者の構造はよく似ている。一方で両者を取り巻く現状は異なっ ており、憑きもの筋への結婚差別はほとんど注目されることがないのに対し、被差別部落出身 者への結婚差別はいまだに大きな人権問題として注目されている。この両者の置かれた現状を 説明するものとして、憑きもの筋や被差別部落といった、人々が結婚差別の際に根拠とするも のに対するリアリティが、憑きもの筋に関しては何らかの理由で失われていったのに対し、被 差別部落に関しては維持されたり、再生産されているからではないかという仮説を本稿では提 示した。  この仮設を証明するためには、詳細な実態調査を行い、「憑きもの」という概念の隆盛とその 衰退の過程を明らかにする必要があるが、それは今後の課題とすることにしたい。

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