最低資本金制度廃止に関する考察

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  • A study for the abolition of minimum capital system
  • サイテイ シホンキン セイド ハイシ ニ カンスル コウサツ

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抄録

P(論文)

本稿の目的は、株式会社の資本金(額)が""零""であることの考察することである。手順としては、まず、最低資本金制度廃止の論理を法的に、そして会計的に吟味し、資本金の意義及び純資産(資本)の部の役割を検討したうえで、制度廃止によるいくつかの疑義を問い、会社法と会計における資本(金)のあり方を検討することとする。ここで制度廃止による法的な論理をみると、資本金は、法的には配当規制上の概念として-それは配当における上限金額(単なる数額)を示すのみであるが-存在するだけで、債権者保護としてそれほど役立つものでもない、とされていることであり、このことから資本金の額は自由に設定でき、金額は""零""でもかまわないという論理が導かれている。こうした論理に対して、会計サイドからの意見はあまり聞くことはできない。それは、制度会計の名のもとで会計の独自性を発信できないからであろうか。会計は、適正な期間損益計算を行いその結果を公表することを目的としており、純資産(資本)の部では、資本の維持拘束性、資本と利益の区分を重視する。また、資本金に関してもその大きさは会社の事業規模をはかるモノサシとして、また、株主からの出資額として財産の存在を示すものとしても意義あるものである。しかしながら、立法サイドが、資本金を""零""にすることを可能とし、債権者保護機能も放棄したような状況では、いくら会計基準は会計サイドのものに従う、といっても会計にもっとも肝心な資本取引、損益取引等を含む会計一般理論を構築することは困難なことなのかもしれない。

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