台湾政治の特質と現状 ―藍・緑対立の体制化と動揺―

抄録

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台湾の民主化は蔣介石・経国の権威主義の解体を推し進めたが,その現実は民主化と折り合わせて権威主義を継承することにもあった。民主化は李登輝政権のもとで権威主義の国民党化を進め,さらに国民党体制は,藍・緑(国民党・民進党陣営)対立として経済界に包摂されるに及んでいる。藍・緑対立の体制化は,高揚する社会運動に対応する体制として整ったかにみえる。  2014年末の22市県を包括して行われた統一地方選挙は翌年に迫った総統選の前哨戦といわれ,台湾住民の関心の的となった。国民党は敗北し,敗因は国民党の大陸政策が産業空洞化を深刻化させて貧富の差が拡大したことにあった。人々の平均的月収が約10万元前後であるのに,庶民向けの割安なマンションでも約2,000万元もするうえ,実質賃金も数年来下がっていた。そのうえ若年層の失業率が2014年14%を超えることもあった。この状況で,民進党は分配の正義を訴えて勝利したのである。しかし,その現実は経済界の中国投資による利益の実現構造を,藍・緑対立を通して容認していくことにあるだろう。  また選挙では,国民党の牙城とされる台北市で無所属の市民派候補が勝利した。それは,経済界の利益に立って人民に対応する藍・緑対立に対して,社会派政治の台頭を示している。

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