欧州人権裁判所の判決 : その構造,影響,および権威

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タイトル別名
  • Judgments of the European Court of Human Rights : Their Structure, Impact and Authority
  • ホンヤク オウシュウ ジンケン サイバンショ ノ ハンケツ : ソノ コウゾウ,エイキョウ,オヨビ ケンイ

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抄録

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欧州人権裁判所は,管轄権が認められている様態の一つである個人申立を中心に判例を蓄積してきた。その判決は敗訴国を法的に拘束し,さらに政治的機関である欧州評議会閣僚委員会が判決の国内執行を監視する制度を採用している。  被告国家が敗訴する場合,一般に,欧州人権裁判所の判決が課している義務は, ①被害者個人への金銭賠償の支払い,②訴訟の対象となった具体的な人権違反の救済(個別的措置),③同様の違反の除去あるいは再発防止のための一般的措置の採択である。しかしながら,②と③について欧州人権裁判所が判決で具体的にとるべき措置を明示することはほとんどなく,とるべき措置内容の決定と実施は一般的に被告国家に委ねられている。ただし,特定の場合には具体的な義務が課されていると解されている(例えば,生命に対する権利等に対する深刻な人権侵害に対して,犯人を捜査し,特定し,処罰する手続的義務)。また,③については,近年,欧州人権裁判所がパイロット判決手続を創出したことが重要である。さらに本稿では欧州人権裁判所の暫定措置についても触れている。  欧州人権裁判所の判決には②による個人救済の効果や③による一般的な効果だけでなく,第三の影響力がある。それは,欧州人権裁判所の判決の重要な部分が,事件の当事国に限らずすべての条約批准国および国内機関が遵守すべき先例としての基準を確立することである。国内裁判所が欧州人権条約および欧州人権裁判所の判決を参照し適用する主要な主体であることを考えれば,このことは重要である。そして,人権規範の実効的な保護の観点から,欧州人権裁判所と国内裁判所との対話がますます重要視されている。

収録刊行物

  • 比較法雑誌

    比較法雑誌 49 (2), 85-117, 2015-09-30

    日本比較法研究所

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