神身離脱の様相と動機―神祇信仰と仏教儀礼のせめぎあい―

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これまで神身離脱は仏教的世界に神が位置付けられる仏教優位の習合形態と論じられてきたが、本稿ではこれを神祇信仰と仏教儀礼の両方の脈絡を踏まえより詳しく検討する。呪術的儀礼として受容された仏教はその性質上、社会に認められるべく効験をより確かにしようと「如法」であろうと努力するが、そのことがかえって世間から乖離するという事態を招くというジレンマを抱えていた。そのため仏教者は、まず社会的地位を確立していた神祇祭祀に巧みに仏教的要素を持ち込み自ら実践し、これを起点にして神祇祭祀の効果を仏教の効果へとすり替えた。つまり神身離脱の言説は、十分には信頼されていない仏教が、自己のアイデンティティーを確保しつつ神祇祭祀の信頼を自分のものへと取り込むべく構成したものである。神祇祭祀は神の要求によって祭祀方法が決まること、さらに暫定性・独立性などの特徴があったので、仏教儀礼を具体的方法とする祭祀が神祇祭祀の展開としても可能であった。

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  • 人文研紀要

    人文研紀要 82 1-29, 2015-10-30

    中央大学人文科学研究所

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