アリストテレス倫理学におけるアイドース(恥)

抄録

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古代ギリシアの民間道徳において「アイドース(つつしみ.恥)」 は重要な概念であったが,アリストテレス倫理学ではそれがどのように位置づけられているかを確認し、その道徳発達における意義を検討する。まずプラトンでのアイドースの扱いについて確認した上で,アリストテレス『ニコマコス倫理学』および『エウデモス倫理学』でのアイドースに関する諭述を検討する。彼はアイドース(聡)を性向(ヘクシス)ではなく情念(パトス)だとしているが,その見方では人柄を示すものとしてのアイドース(つつしみ)とい う視点が欠けているように見える。しかし.情念,能力,性向の 3つの区別に込められた意味を確認するならば,彼の認定は不自然ではないし.また情念(パトス)が常に人柄と結び付けて考えられていることを考慮すれば. 「つつしみ」としてのアイドースが無視されているわけではなく,むしろ道徳発展の上で重要な意味を持ちうることを見て取ること できる。さらに,恥が「誰かに対して」感じるものである点に着目するならば,恥を感じる相手が品位ある人かどうか.といった点で,恥に関しても道徳発達のプロセスが想定さ れていることが確認できる。

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