治療行為の正当化における患者の同意

書誌事項

タイトル別名
  • Justification of Medical Treatment and Informed Consent

抄録

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われわれの日常生活において必要不可欠ともいえる治療行為。一般に,治療行為は社会において正当なものとして受け入れられている。しかし,その実態をみてみると,患者の身体に注射をしたり,メスを入れたりするなど,刑法の傷害罪の構成要件に該当するとも思われるものが少なくない。さらには,治療行為を受けた結果,重い後遺症が残ったり,場合によっては死亡したりするケースもある。このような行為がなぜ正当化されるのであろうか。今日においては,治療行為の正当化を導くにあたっては,「患者の自己決定」尊重の立場から,患者の同意を重視するべきであると考えられている。しかしながら,治療行為の正当化を導くにあたって,患者の同意がどのように位置づけられるべきなのか,という点は必ずしも明らかにされていない。本稿においては,まず,治療行為に対する患者の同意がどのような意味を持つのか,という点に留意しつつ,治療行為の正当化根拠およびそのための要件について検討を加えた。さらに,患者が未成年者であったり,重度の精神障害を負っていて治療行為に対して同意をすることができない者である場合には,治療行為はどのように正当化を導くべきなのか,についても検討を進める。  なお,本稿は,2016年1月27日に中央大学市ヶ谷田町キャンパスにおいて開催された「生命倫理に関する研究会」において報告させていただいた内容をもとに,研究会でご指摘いただいた質問などを織り込んでまとめたものである。

収録刊行物

  • 比較法雑誌

    比較法雑誌 51 (1), 97-127, 2017-06-30

    日本比較法研究所

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