世代間倫理の正当化をめぐって

書誌事項

タイトル別名
  • On Justification of Intergenerational Ethics

説明

1970年代ごろから行われてきた世代間倫理の正当化の議論は,多くの場合,現在世代がエゴイストであり,相互性(reciprocity)だけが実質的拘束力を持つ倫理の根拠でありうるとする前提に基づいて展開されている。本稿は世代間倫理の正当化論の多くが依拠しているこの前提を批判的に検討し,正当化論をより柔軟で,実践を重視した視野からとらえ直すことを試みる。まず,世代間倫理の正当化論が展開される道筋とその出発点となる前提を確認する。次いで,従来の正当化論を瞥見し,これらの試みが以上の前提から出発する限り失敗に終わることを確認する。さらに,以上の前提が議論の出発点とされる理由を明らかにするとともに,その理由に必然性がないことを指摘する。最後に,世代間倫理の正当化論は,それが本来達成するべき実践的な目的の観点から見た場合,条件つき・限定的正当化として行われ,評価されるべきであることを主張する。

収録刊行物

  • 人文研紀要

    人文研紀要 89 309-332, 2018-09-30

    中央大学人文科学研究所

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ