フーフェラントの長生法における精神力の位置: その現代の健康教育における意義

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タイトル別名
  • フーフェラント ノ チョウセイホウ ニ オケル セイシンリョク ノ イチ : ソノ ゲンダイ ノ ケンコウ キョウイク ニ オケル イギ
  • The position of the active spiritual power in Christoph W. Hufeland’s macrobiotic:its significance in current health education

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抄録

近代西洋医学の草創期に活躍したドイツの医師クリストフ・ヴィルヘルム・フーフェラント(1762-1836)は、生命力の原理をもって、一方では当時の西洋医学の中で種々に分かれていた医学を統合しようとし、他方では医師兼著述家として一般人のための長生法を樹立して、当時の人々の霊薬などの迷信を根本的に正そうとした。本研究は、フーフェラントの長生法において人間の精神力(the active spiritual power)の果たす役割を明らかにする試みであった。フーフェラントは、いのちを炎と対比するフランシス・ベーコン(1561-1626)のアイディアを受け継ぎ、またベーコンがその意義を見出した長生の概念にヒントを得て、古代ギリシアのヒポクラテス派の医術の大自然(Nature)と等価と位置づけた生命力を礎とする長生法を樹立した。フーフェラントは、人間の高次の精神力が生命力に大きな影響を及ぼすものと把握した。彼は、人間の高次の精神力をとりわけ人間の創造された高次の目標達成へと向かう力すなわち品格の力(the moral power)と位置づけた。フーフェラントは、人間のいのちを身体的に見ると不断に変化する無常の物質的現象にすぎないが、この人間の高次の精神力だけが、不断に変化するいのちの現象の礎を形成し、全体を結合し規制するものであり、人間に独自のものであり自己持続的なものと考えた。フーフェラントの長生法における人間は、自身が創造の主であり、支配者であり、施与する者であった。それは、自身が創造された目的を知って、それを身体的に実現できる高次の精神性を有する主体すなわち「正直で感性のある人間」であった。一方、近代西洋医学における人間の高次の精神力は、プラセボ効果として副次的な役割のみを有し、加齢の生物科学的な機序に基づく加齢予防であるアンチエイジングや自然治癒力を意味するレジリアンス(resilience)の概念においては、品格の力を含む高次の精神力は顧みられていない。

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