中国P2Pネット金融プラットフォームのイベントヒストリー分析

説明

本稿は,わずか10年の間に急激な成長を遂げた中国のP2Pネット金融において,仲介業務を果たしている取引サイト(プラットフォーム,以下PFと略す)の活動について分析している.具体的には,中国P2Pネット金融のポータルサイトである「網貸之家」が収集・集計した各PFに関する2016年1月~2018年4月までのパネルデータを用いて,PFにおける問題発生についてのイベントヒストリー分析を行った.中国のP2Pネット金融市場は,2007年に「拍拍貸」と「宣人貸」がサービスを開始して以来,既存の伝統的金融機関から排除されてきた農家や中小企業の旺盛な資金需要を背景に,PF数,取引規模ともに2017年まで急拡大してきたが,あまりに急速な成長の弊害として,PFによる夜逃げ,倒産,支払不能などの問題が発生している.また,政府はP2Pネット金融に何ら規制を設けず,半ば黙認する状況であったが,2016年8月に初めての規制となる暫定条令が公布された.本稿ではその暫定条令がPFにもたらした影響についても分析している。 本稿の分析により得られた知見は次のとおりである.まず,中国政府による規制の公布および規制の有効化が,それぞれPFに対してどのような効果を持っていたのかが明らかになった.2点目として,PFにおける様々なデータを用いた結果,PFの健全性のシグナルとなると考えられたダミー変数群はほとんど有意な影響を持っていないが,いくつかの取引データがPFの問題発生に影響を与えていることが明らかになった.この結果は,PF自体の倒産リスクを抱え,優良なPFの選択を迫られる貸し手にとって,PFを選択する際にどの情報が有効な指標となりうるかを示すものとなる.

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