農業後継者における情報ネットワークの特質と地域的支援の課題

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  • The Network of Young Farmers : How are they embedded in rural region?
  • ノウギョウ コウケイシャ ニ オケル ジョウホウ ネットワーク ノ トクシツ ト チイキテキ シエン ノ カダイ

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抄録

本研究の目的は,農業後継者がもつネットワークの構成,範囲の特徴を,農村にある諸組織(集落組織や農協組織など)との関連(埋め込み「embeddedness」)から明らかにすることである.それによって,今後農業経営主となる後継者が抱える課題とそれへの地域的支援のあり方について,ネットワークの視点から考察を加える.本研究では,農業経営を担う主体が営農に関する様々な情報を収集したうえで,情報を分析,判断し,経営行動として反映させていく,一連の活動の場として,ネットワークをとらえる.ネットワークは,個人の行動に大きな影響をもたらすものとして注目されてきた、また,個人が持つネットワークは,すでに地域に存在している社会経済的な関係に「埋め込まれ」ており,その影響を受けて展開するということが指摘されている,さらに農村振興の研究対象として,農業経営体や政策などではなく,ネットワークを対象とする研究の有効性も研究されている.日本における農業,農村分野でのネットワーク研究も90年代後半から行われるようになってきた.それまでの「イエ」,「ムラ」という強固な関係に捉えられた農業経営者という姿ではなく,それらを飛び越えたネットワークを主体的に形成しながら農村で活動する新たな経営主像が実際に現れ,それを理解しようという動きである,これからの農村社会のあり方を「農村市民社会」と定義し,その運営主体として従来のイエやムラではなく自立した個人のネットワークである「多様な集団のリーダー連合」として捉えたものに,宇佐美がある,こうしたネットワーク型の組織がこれからの農村社会のあり方の一つとして展望されている,一方で,能動的なネットワーク形成ではなく,これまでの農業・農村に関する組織(集落組織農協組織など)が未だに機能している地域において,それらの既存のネットワークと能動的に形成されたネットワークとの関係について分析したものはない,また、後継者のネットワークに注目をした分析もあまり行われていない,現在我が国の農業政策はこれからの農業の担い手として農外からの企業参入による「企業的経営」や「起業家精神」をもつ農業者が想定されている,また,地域農業発展の一つの方策としての,六次産業化,農商工連携に向けて様々な政策支援がなされている.もし仮にそうした方向で日本農業の担い手を想定するならば,あらたな農業経営者のあり方を実現するためには,それに応じた新たなネットワークが必要となる.したがって,これからの地域農業を担っていく後継者のネットワーク構成と範囲を,既存の農村組織との関係から明らかにすることが必要である.本研究では,上記の課題を特定の地域を対象として,後継者のネットワークを既存のネットワークとの関係(埋め込み)と,個人が主体的に形成しているパーソナルネットワークという二段階で把握することで接近する.分析は北海道訓子府町を対象とする.訓子府町は専業農家の多い北海道においても,三世代の家族経営を中心として分厚い家族経営が展開している,タマネギ,一般畑作,青果物を中心とした地域である,町は,1980年代という早い時期から減農薬栽培などに取り組み,現在の経営主世代が中心となり,既存の農業生産のあり方を革新して現在につながる地域農業を形成してきた.

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