<論説> オーストラリアのナショナル・カリキュラム開発とグローバル化に関する考察 : コンピテンシー型の能力を中心に

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抄録

本稿の目的は世界的に潮流となっているコンピテンシー型の能力に着目して、オーストラリアのカリキュラムのグローバル化の特徴を考察していくことである。コンピテンシーとは、知識やスキル、態度や価値観などを内包する能力を意味しており、特にOECDがDeSeCoを通じて提示したキー・コンピテンシーやPISAによって、各国が注目するようになってきた。オーストラリアでもナショナル・カリキュラムの中で策定された「汎用的能力」において、そうした能力観が反映されている。しかしオーストラリアでは以前よりコンピテンシーは検討されていた。このため本稿では、オーストラリアでコンピテンシー型の能力が取り入れられるようになった背景、特徴、現在の「汎用的能力」との共通性、グローバル化との関係を分析、考察する。そのためにグローバル化の概念について、OECDやPISAの世界的影響という視点から議論の枠組みを設定する。これまでのオーストラリアの教育改革において、連邦政府は州・直轄区との関係性もあり、教育内容を提示するのではなく、教科横断的で汎用的な能力観を示してきた。また、1985年のKarmelレポート、1991年のFinn委員会レポート、1992年のMayerレポートではコンピテンシー型能力観の中でリテラシーやニュメラシーを重視しており、義務教育後の教育訓練や雇用との関係改善からコンピテンシーを検討してきた。2008年の「メルボルン宣言」では、グローバル化を強調しつつ、コンピテンシーに基づいた教育を実施してきたことを評価するために積極的にPISAを取り上げている。「汎用的能力」は、リテラシーやニュメラシーの重視などこれまでのコンピテンシーと概ね同様のものであり、OECDの影響があった訳ではない。これらからオーストラリアでは国内の社会的背景からコンピテンシーが検討されてきたのであり、OECDに対して同調するという形でグローバル化しているという結論を導き出す。

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