プレヒトの『コリオレーナス』について

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ブレヒトの『コリオレーナス』はシェイクスピアの同名の戯曲を歴史の弁証法的発展という観点から改作したもので,シェイクスピアはコリオレーナスの悲劇に重点を置いて,悲劇へと一直線に筋を運んでいるのに対して,ブレヒトはローマ国内の発展(民主化)に重点を置いて書き換え,あるいは書き加えをしています。歴史の弁証法的発展がこの作品によってモデルとして例示されているとしても,ブレヒトは機械論的弁証法を言っているわけではなくて,歴史は確かに弁証法的に発展はしますが,肝心要の一番重要な問題点は民衆の実力ですよ,これなくしては発展はありませんよ,「人間の運命は人間」ですよと,主張しているように思います。また,社会から相対的に独立した演劇独自の世界という点から見ますと,ブレヒトは過去の戯曲を現代の歴史観で改作吸収することによって,演劇という独自の世界の弁証法的発展を試みたのではないでしょうか。

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