経済エリートの社会的ポジションと温情主義の思想-昭和初期を中心に-

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タイトル別名
  • The Economic Elite and the Idea of Paternalistic Labor-capital Relations in the Early Showa Era
  • ケイザイ エリート ノ シャカイテキ ポジション ト オンジョウ シュギ ノ シソウ : ショウワ ショキ オ チュウシン ニ

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抄録

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昭和初期には、財閥やその経営者による富の独占(あるいは独占的差配)に対する批判的な思潮が急速に高まっている。これには、大正末以降に政府が提起した労働組合法案に対する当時の経済エリート(いわゆる財界人)の対応のあり方が、大きく影響している。昭和4年以降、日本工業倶楽部を中心に展開された法案反対運動は、労資の対立的な構図を浮き彫りにするとともに、典型的な富裕層であり巨額の資本を差配している財界人への批判を過熱させた。法案反対運動では、財界人がかつてないほど党派的な動きを見せた。さらに、大正8年に労働時間制限がアジェンダとなって以来、久しぶりに温情主義が彼らによって強く主張され、温情主義を基盤とする日本の労資関係の固有性、そして、労働組合の法的保護により温情主義が破壊される危険性が、それぞれ強調された。そうした主張は、実業界や労働界が大国的な労資関係に移行することを拒否する、いわば非モダンの宣言であり、これにより彼らの独善的で自己中心的なイメージが生まれた。彼らが見せた党派性や彼らに関する画一的なイメージの形成過程は、富の格差の拡大が著しい昭和戦前期の階層的状況を象徴しているであろう。

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