験者のあくび : 『枕草子』「すさまじきもの」段小考
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説明
『枕草子』第二十三段「すさまじきもの」の段には、験力を持った祈祷僧が、物の気を患った者の治療のため、憑り坐しに物の気を移らせようとして加持するのだが、全く効果が表れず、あくびをして横になってしまう、という「すさまじきもの」の一例がある。従来これは「加持に疲れ、何の効き目もないのに倦み飽きて眠くなってしまった験者(祈祷憎)の、やる気のなさを象徴する〈あくび〉」と解釈されてきたが、『古今著聞集』巻六・第二六六話、『栄花物語』巻二十九「たまのかざり」などによると、加持場面での病人のあくびは、物の気が治る兆候として現れており、本段における清少納言の筆致なども考慮すると、験者への皮肉を込めて、「本来あくびが期待される病人ではなく、験者がしてしまう」という文脈に読むべきである。
収録刊行物
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- 三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学
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三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 60 85-92, 2009-03-31
三重大学教育学部
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050282677916423040
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- NII書誌ID
- AA12097333
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- HANDLE
- 10076/10629
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- ISSN
- 03899233
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- IRDB