カリマンタン首狩と国家 : 民族対立抗争の政治人類学

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  • カリマンタン クビカリ ト コッカ ミンゾク タイリツ コウソウ ノ セイジ ジンルイガク

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抄録

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スハルト政権崩壊後の混乱が続くインドネシアでは,いわゆる民族抗争が各地で続発している。ボルネオ南部,インドネシア領中部カリマンタン州サンピトの町を中心に起きた首狩事件も,こうした民族抗争の一つとして,インドネシア国家政治や「民族性」の問題として一般化され理解されることが多い。しかしながら,こうした一面的理解は地域固有の民族誌や首狩文化の意義を看過し,ボルネオの地域性にもとづく事件の本質を見逃すことになるだろう。こうした視点から事件を見ると,汎東南アジア的な平地民と山地民の対立,伝統国家と権力のあり方とそれをめぐる諸観念,アジア的農耕文化と首狩文化など地域固有の文化が事件と深く関わっていることが分かる。そして,首狩は過去の蛮行,文化遺産ではなく,今日もボルネオ文化の内奥に,人々の心の内に,現実として生き続けている。本稿は民族誌という視点から,首狩事件の人類学的分析の試みであると共に,首狩事件を通じて民族誌が記述するボルネオ文化をより深く理解しようとする試みである。

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