上伊那地方における林野利用の史的研究 : その3 伊那地方の榑木生産と手良郷

書誌事項

タイトル別名
  • Historical Studies on Forest Utilization in Kamiina District (3) : Tera villages and lumber chops production in Ina region
  • 上伊那地方における林野利用の史的研究-3-伊那地方の榑木生産と手良郷
  • カミイナ チホウ ニ オケル リンヤ リヨウ ノ シテキ ケンキュウ 3 イナ

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説明

1 幕府による「伊那山」支配には, 3つの特徴がある。第1に, 森林地帯のすべてを幕府領にせず, それと藩領とを交錯させていたことである。第2に, 石代納と異なる特異な金納が幕末まで残ったことである。これは, 検地によって決定された石高の中の領主得分を榑木に換算し, さらに榑木を金高に換算することにより決定される年貢高を持つ村であり, 「榑木成村」と呼んでいる。第3に, 木曽山に比べ, 森林の過伐が江戸中期まで続き, 森林の再生産を維持していく方向での強力な林野統制が行なわれなかったように推察できることである。2 「伊那山」経営の中心にあったのは千村支配地であり, 榑木の再生産構造は伐木造材を引受ける山方の村と飯米を提供する里方の村とが, 榑木生産の中で相互依存的な関係に位置付けられていた。3 「榑木成村」の特異性は, 木材生産が不可能になった後にも木材生産の体制がそのまま残され, 年貢の中に反映させられたことにある。すなわち, 「榑木成村」の史的な展開過程は慶長年間, 寛文年間および享保年間に画期を設けることができるが, 年貢榑木の生産が中止され金納化していく享保期以後にこそ, 「榑木成村」としての特異性 (石代納と異なる年貢勘定の形成) が明らかとなる。

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