<特集論文 1>HIV陽性者によって「語られなかったこと」-- HIV感染予防をめぐる語りの分析から

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タイトル別名
  • The "Unsaid" According to People Living with HIV : An Analysis of the Narrative Surrounding HIV Infection Prevention

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抄録

本論では、HIV 陽性者によるHIV 感染予防に関する語りについて分析する。本論の前半ではHIV 陽性者によって書かれた4冊の本の内容を分析し、後半ではそれらの本の中では「語られなかったこと」について、インタビューを行った「ゲイ」を自認する5人のHIV 陽性者の語りの内容を分析した。この「語られなかったこと」の分析視点は、エイズ施策における公衆衛生的権力、つまりミシェル・フーコーの言うところの生政治とも関わっている。生政治は、HIV/AIDS とともに生きる人々の死と直面する経験を隠蔽し、逆に公衆衛生的予防施策を強化しようとする。HIV 陽性者がどのような経緯でHIV に感染したのか、感染したことによって今までの自分の生き方がどのように変容したのか、そしてその経験を他者とどう共有しケアをするのかという語りは後景へと退き、HIV 感染「予防」の重要性が強調されることになる。特に、1997年にHAART(抗HIV 療法)が導入されるようになって以降、HIV/AIDS は死から遠ざかっていくことになった。死を生に巻き込みながらどのように生きることができるかが、生政治への抵抗のあり方を考える一つの契機となるであろう。

収録刊行物

  • コンタクト・ゾーン

    コンタクト・ゾーン 10 (2018), 143-162, 2018-06-30

    京都大学大学院人間・環境学研究科 文化人類学分野

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1050282810837026432
  • NII論文ID
    120006491933
  • NII書誌ID
    AA12260795
  • ISSN
    21885974
  • HANDLE
    2433/232962
  • 本文言語コード
    ja
  • 資料種別
    departmental bulletin paper
  • データソース種別
    • IRDB
    • CiNii Articles
    • KAKEN

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