S. D. ハントとマーケティング研究の方法論 : 再考

書誌事項

タイトル別名
  • S. D. ハント ト マーケティング ケンキュウ ノ ホウホウロン : サイコウ
  • S. D. Hanto to maketingu kenkyu no hohoron : saiko
  • S. D. Hunt and methodological problems : reconsidered

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抄録

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マーケティング研究の世界において,自らの知識領域の科学的身分を問ういわゆる方法論的な議論が芽生えて以来,少なくとも50年近い時が経過した。当初,この種の議論は各論者の主観的信念の表明の域を出るものではなかったが,1970年代半ばからは,明らかに,現代科学哲学の知識成果と接触を示し,客観主義的な議論のレヴェルへ向けて前進してきたと言えよう。そして,この方向での議論の嚆矢となったのがシェルビー・D・ハントの業績であった。当初,彼は,基本的には論理経験主義を中心としながらも,その他の立場からも主要な概念や考え方を適宜借用するという折衷主義的立場に立ち,方法論的には極めて重要な提言を展開した。すなわち方法一元論と反帰納主義のテーゼがそれであった。われわれは,この二つのテーゼは正鵠を射ていると考え,高く評価するものであるが,しかしながら,ハントの場合,それぞれ境界設定基準を異にする立場が交錯していることもあって,この二つのテーゼが内的に衝突し矛盾に逢着せざるを得ない事態になっている。本稿では,このような事態がなぜ生じたのかについて,ハントの主張に分け入って解明すると共に,この種のディレンマを回避するためには「正当化の文脈」を非正当化主義的に取り扱い,「験証」概念の本来の意味を救済することが必要であること,そうすることによって,科学的言明のテストのあり方および情報内容の豊かさを判断するための方途も開けることを論証する。

植竹晃久教授退任記念号

収録刊行物

  • 三田商学研究

    三田商学研究 48 (1), 29-39, 2005-04

    慶應義塾大学出版会

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