理論指向の実証社会学研究 : 「個人的地位」の仮説を通して

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タイトル別名
  • Positivistic Sociology Research Guided by Theory : A Hypothesis on “Personal Status”
  • リロン シコウ ノ ジッショウ シャカイガク ケンキュウ コジンテキ チイ ノ カセツ オ トオシテ

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説明

この論文の目的は二つある。第一の目的は、理論指向の実証社会学研究と名付けた筆者の研究方法論を示すことである。すなわち、新しい知識(分析枠組み)の創出のためにそれぞれの見解に理論的なアプローチを提供すると同時に、経験的知との対話を行う。具体的にいえば、私たちが文献的研究を蓄積し始めれば、重要な概念を抽出し、社会学の既成概念に対して実証的検討が要求される。さらに形式上の分析枠組みを構築し、その理論的な含意を熟考する作業が必要である。そのような熟考を分析枠組みとして改めて明確に述べておくことで、従来の理論的枠組みを修正してゆく試みである。しかし、検証可能なものの領域へ理論および分析枠組みを持たなければ、理論と現実との対話も期待することもできないだろう。第二の目的は、如何に理論指向の実証社会学研究を行うかという問題設定に対して、「個人的地位」の仮説という筆者のオリジナルな研究事例を通して提示することである。たとえば、人々の地位の評価に際して、いわゆる「社会的地位(財産、学歴、収入等)」を構成している評価基準群のほかに、もう一つの評価基準群が作りあげている地位が存在すると考えられる。それは日常的な人間関係をよく表している言葉のような、たとえば、義理・人情、協調性、礼儀の正しさ、道徳、羞恥心などの用語群によって構成される地位概念であり、これを「個人的地位」という分析概念と名付ける。さらに従来の階層研究としての社会的地位という分析概念に対して、「個人的地位」という新しい分析枠組みを提示することによって、実証的データを用いてその概念の存在を確認することで分析概念としての妥当性を明らかにする。「社会的地位」への評価の高低と「個人的地位」への評価の高低は異なる場合が現実に存在するというのが、作業仮説である。用いたデータは質問紙調査によるもので、「社会的地位」の高さだけによって相手を評価していないという事実が確認され、その結果、仮説の「個人的地位」という構成概念の必要性とその意義が確認された。

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