京都産業大学付近の上空における風の特性 : パイバル観測学生実習の方法と成果

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タイトル別名
  • A Property of the Upper Wind over the Surroundings of Kyoto Sangyo University : A Method of Practice Teaching of the Pibal Observation and its Educational Effects
  • キョウト サンギョウ ダイガク フキン ノ ジョウクウ ニ オケル カゼ ノ トクセイ パイバル カンソク ガクセイ ジッシュウ ノ ホウホウ ト セイカ

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抄録

京都産業大学は京都盆地の北端に位置しており,周辺の地形は起伏に富んでいる.ここで,著者は地学関係の授業の一部としてパイバル観測の学生実習を行った.1994年から2009年までの16年間に4,000m以上の高度(地上高)まで気球を追跡することができたのは20ケースであり,これについて再解析を行って,その結果をまとめた.まず,風向のベクトル平均値については,地上から海抜高度(以下「高度」と略す)700mまでは南西であり,これは京都市市街地から吹き上がってくる谷風の影響が考えられる.それより上空では,風向は時計回りに変化していき,高度2,500m以上では西北西で,変化が小さい.次に,風速のスカラー平均値については,高度2,000mを超えると,急に風速が増大しているため,これは地表面の起伏の影響が小さくなっていくことを意味している.この結果を気象庁高層気象観測所3地点(輪島,米子および潮岬)のレーウィンゾンデ観測と比較してみると,米子と潮岬では,風速が急激に増大する高度が1,500mであり,京都産業大学周辺では地表面の起伏の強い影響が500mも高くまで及んでいる.最後に,パイバル観測の風と気象庁3観測所の風との間でベクトル相関係数を求めた.その結果,高度2,500mから高くなるにつれて,相関が高くなっていくが,これは地表面の起伏の影響が小さくなっていくことを意味している.これはパイバル観測による風向や風速の高度分布の特徴ともほぼ一致している.この解析の結果から,実習を行った春秋季の移動性高気圧に覆われた穏やかな日において,京都産業大学周辺における地表面の起伏の影響は海抜高度2,500m あたりまで顕著であるということが明らかになった.  なお,この実習は,上空風について準備,観測,解析の一連の作業を通して実際の大気を状態を正確に知るという地学では,数少ない学生実習の一つである.この実習を通して気象への関心が深まり,その方面へ進路を求めた学生も少なくない.

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